風邪で思い出した。

母方の実家のある村は生姜の産地で、風邪をひいているものがいると、かならず生姜をすって、その絞り汁を湯に入れ飲ませる。飲みにくいときは砂糖を加えたりもする。これが効くらしい。
この間、祖父の法要で訪ねたときも、父が風邪をひいていて、父のマスクをした姿を見るなり、叔母は、娘(つまり、私のいとこ)に「**、生姜ばすんなっせ(生姜をすりなさい)」と言いつけて、自分はすたすたと、裏口から出ていってしまった。何だろうと思っていると、赤く細い根の生えた植物を手に、すぐに帰ってきた。

母がそれを見て「わぁ、ベンガば、久しぶり見た」と驚いた。

「ベンガ? 何それ」子供の時なら、傍にいる弟と顔を見合わせて首を傾げて終わっていたのだが、弟はいなかったので、わたしは声に出して聞いた。