ごはんを食べていると、電話が鳴った。

「…もしもし? そのまま黙って聞いてくれ。いろんなところからいろんな奴が典拠を引っ張り出してきて、議論の水位を上げようとする。これに反論できないならオレの主張は正しいのだ、ってね。でもそんな奴の挑発にのっちゃいけない。すくなくとも、反論できないことできみが無力感を感じる必要はない。そいつの言い分が局所的に正しいとしても、そいつが、議論を混同させて、何が問題だったのかを忘れさせ、話を大きくしていることのほうが重要だ。大問題だってそいつに言われたんじゃないか? 確かにそいつの問題設定の中では大問題だ。でも君の中ではどうなんだ? いいかい、つまらない言い分に耳をふさぐことも君に与えられた能力なんだ。知らないことを恥じる必要はない。考え方の筋道が間違っていることこそを、そしてそのことをあえてしている奴こそが恥ずかしい奴なのだと思うんだ。」