iPodを買ったらまず自分のライブラリを重くすることを考える

Kindle関連の記事を眺めていて、実用書や流行の小説が電子化すれば売れる、という調子のものがわりとあって、そうか? と思う。この話は継続的なテーマとして読んでいくべきだと思ったが、とりあえず自分の問題意識をメモ。

売れ筋の本と電子書籍を結びつけるのは、「iPodを買ったら売れてる曲や好きな曲を入れて聴くだろう」という発想と変わらない。「好きな曲を入れて聴く」のはウォークマンでもできた。

iPodというのはそういうものではない。あるときはクラシック、あるときは電子音楽、あるときはPodcastを、シチュエーションや気分に応じて切り替えて消費するための、ライブラリだ。

ライブラリのヴァラエティが、直接、iPodの価値を決める。であるなら、たとえば、実用書や最近の小説や漫画と同じくらいの比率で古典が読めることが、電子書籍のひとつの価値だろう。

実際に、Kindleの本を、いくつか買って入れてみた。自分が安心するくらいまで、一通りヴァリエーションを拡げないと、据わりが悪いのだ。

それでずいぶんiPodっぽくなった。『ニューロマンサー』と『プロレゴメナ』が、同じ装置の上でボタンを数回押しただけで切り替わって読めるということに、ちょっとした目眩を覚える。

いや、英語だから、日本語に輪を掛けて、まともに読めないんだけど。

追記

この話は佐々木さんの本の中で『本のアンビエント化』という言葉で論じられているらしい。帰りに買って読むか。

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

ブライアン・イーノのインタビューを思い出す。

私の娘たちはそれぞれ 50,000枚のアルバムを持っている。ドゥーワップから始まった全てのポップミュージック期のアルバムだ。それでも、彼女たちは何が現在のもので何が昔のものなのかよく知らないんだ。例えば、数日前の夜、彼女たちがプログレッシブ・ロックか何かを聞いていて、私が「おや、これが出たときは皆すごくつまらないといっていたことを思い出したよ」と言うと、彼女は「え?じゃあこれって古いの?」と言ったんだ(笑)。彼女やあの世代の多くの人にとっては、すべてが現在に属していて、“リバイバル”というのは同じ意味ではないんだ。

http://www.timeout.jp/ja/travel/feature/138

追記2

自分にしては冴えてると思って書いたけど、essaさんのエントリを読んでて、それが頭にあっただけみたい。

追記3

上の引用は書籍(iPhone用)の中にもそのまま入ってた。ネタバレして申し訳ございません…。