今日の再生(Alan Wake)

ちょっとやってみた。

スティーブン・キングの言葉を借りれば……」というナレーションと共にくねった山道の空撮から入るオープニング。そしてその後のゲームでも「どうやら道がふさがれてしまったらしい」といった、伊坂幸太郎的にかっこつけた主人公の独白があちこちに添えられる。このかっこつけたボンクラ感を愛せるなら(伊坂幸太郎はどうでもいいですが)この後の数十時間の楽しさは約束されたと思っていいのかも知れない。

ゲームの部分は、今のところまぁどうでもよくて、映画的なつかみと風景を楽しむもの。

事前の想像通り、サイレントヒルみたいな「覚めない夢」展開=脈絡が作り手にしか見えてない展開をしそうな匂いは、かなりする。

1時間ちょっとしかやってないのに、もう2回夢になりましたからね……!

ただ、このゲームは、CERO「B」指定になっているというところが、ほどよい縛りになっているのかもしれない。

あれだけ銃で鎌持った人型を撃ち殺してるのにCERO「B」。夢だから殺しても「B」なのだと解釈すると、逆に言えば、「B」のついたゲームの中では人を撃ってもそれは「夢」だ、ということがはっきりしているんじゃないか。サイレントヒルみたいな終わりのない(ほんっとうにうんざりする)展開とは、少し違うものになるような気はする。

まぁ私は特に、トンネルを抜けたら隔離病棟でした、とか、いつの間にか何かの地下牢にいました、といった、独りよがりで非現実的な怖い場所設定が好きじゃないのだ。そんなん、ファンタジーと変わらん。

夜の森を歩いていて、遠くにガソリンスタンドの灯りが見えたあたりで入った小屋にラジオが落ちている。スイッチを入れると、ローカルラジオ局で、「もう夜もだいぶ更けてきましたね、みなさんもうおやすみでしょうか」と、ラジオ深夜便のようなおじさんのおしゃべりが聞こえてくる。もしこの、怖さと孤独と安心感のないまぜになった夢の感じが、わかって演出されているのなら、私はこのゲームの作り手を、そうとう信用してもいい。おかしな点がいろいろあっても、そこは心眼でカバーできる。

雑なところは本当に雑で、大丈夫か、と不安になる。ひなびたダイナーでアイパッチをしたおっさんがでてきてジュークボックスで曲をかけさせるところとか。ツインピークス好きなのはわかるが、もうちょっとなんか考えろよ! と笑顔で突っ込みたくなる。それ以前にそもそもちょっとバギーで、イベントの音声が重なって再生されたり。

しかし、デッドライジングみたいな、「B級ホラーを題材にしたまともなゲーム」よりは、こういう、「ホラーを題材にしたB級のゲーム」のほうが、愛嬌があって好ましい。B級ってそういうものでしょう。

おっさん向けだとわかってるのだから、「いかにも」なデモシーンはもっと減らしてもいいんじゃないかなー。特に日常パートは。ダイナーでロフトの鍵を貰うシーンで、デモに切り替わってミステリアスな老婆が出てきたりするのは余計。そこはカメラは引きのまま操作できるところに老婆がヌっと入ってきて、だな……(以下略)

とりあえず「シャイニング」「シークレット・ウィンドウ」「ツイン・ピークス」「X-ファイル」あたりの作品を読んだり観たりしていると楽しめるかも。(あぁ、キングは「ミザリー」も「ダーク・ハーフ」もそうだろうし、たぶんネタは無数に……)

それら映画からの引用や似た雰囲気が、一種のテンションノートになって、プレイ感をリッチにする。辿り着いた湖の上のロッジでは「シークレット・ウィンドウ」を想起して、ストーリーとは全く関係なく、自分が妻のアリスを殺して裏庭に埋めてしまうことを、思い描いてしまう。

と言いつつ、私もあんまり観てない。たくさん観ていればそれだけ楽しめるはずなので、この機会に観てみることにしよう。