インセプション

他人の夢の中に複数人で潜入する、という大ネタ一本で勝負。序盤で仲間が集まり、計画を立て、ミッション実行。それだけの話。

ド王道の展開と筋書きに、物量を過剰投入してこうしてやる! という、力技が成功するのを、目の当たりにした。ストーリーの落とし前の付け方は、後半ほとんど見えている状態になるのだが、それでも全く退屈しなかった。

後半、ある奇妙なルールにしたがって、複数の世界が交錯してサスペンスを作るのだが、それぞれの世界の描かれ方や切り替えに、ジョジョ的な様式美を感じた。後半ずっとニヤニヤしながら、脳内で「チッ、チッ、チッ…」「ド・ド・ド…」などと擬音を画面に貼り付けて観ていた。

「夢でした! でも現実だか夢だかわかんないよね!」という話を、夢だかなんだかわからないから、好き勝手に話を引っ張る(「未来世紀ブラジル」とか……)ことをしてない。夢の世界を一定のロジックにしたがって動かし、かつ、ロジックを過剰に説明せず、わかりやすいサスペンスを盛り込み、さらにその中に感情を織り込むことに成功してる。

予告でスペース・コロニー状に地形が折りたたまれるのを見たときには「なんか見たような…ってかパース狂ってないか?」くらいに思っていたのだが、あれはああいう見え方をするので間違ってないし、しかもものすごい序盤で出て来る。というか予告ではセプテントリオンかポセイドンアドベンチャーみたいな映画に見える、というのがすごい騙しであって、「なんか全然違う!」とびっくりしたいのなら、夢という話すら聞かずに予備知識ない状態で観に行ったほうがいいのかも知れない。

もし「ニューロマンサー」がうまい具合に映画化されていたら、サイバーなんとかとかいう部分はどうでもよくって、ひょっとしてこんな感じのエンターテイメント映画になってたんじゃないかな、と、なんとなく思った。そういう、「こんなSF映画が観たいよな」という、ジャンル全体への願望みたいなものを含めて、いいSF映画だと思います。

すごいもん見た感が存分に味わえた。ディカプリオの相棒役の優男はどこかで見たな、と思ったが、500日のサマーのあのフニャチンか……!(結局観てませんが)

88点。

ところで、この映画のカタルシスは、再帰などをプログラムで書いているときのそれに非常に近いのではないかと思う。プログラマーの人は自分のやってることを理解してもらうために人に薦めて見せたりするとよいのではないだろうか。

リスト遊び―Emacsで学ぶLispの世界 (ASCII SOFTWARE SCIENCE Language)

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夢を食ってる獏の夢を食ってる獏の夢を食ってる獏の……表紙。

「え、サイキがテーマの映画だって?」「そうそう、PSYCHEなの」