シングルマン

これも間があいた。

時代は1962年、キューバ危機のアメリカ。イギリスから英文学を教えるためにアメリカの大学に来ている主人公が、16年連れ添ったパートナーを喪い、絶望の日々を過ごすという話。

冒頭、「今日を生き抜こう」と主人公は自分自身に言い聞かせる。今日が人生最後だと思うから、ところどころ、感覚が鋭敏になって、濃い色彩の映像になる。

しかし、主人公にとって、こんな日は今日が初めてだったのだろうか、と考えると、よくわからなくなる(ピストルの弾を買うなどということが、そうそうやることではないにせよ)。

ラスト近く、突然感覚が明晰になって、死にたい気分がどこかにいってしまう…というシーンが現れるのだが、そこに理由なんかないのだ。鳥が羽ばたくのを見て、「この一瞬」を意識して、それで鬱々とした気分がどこかにいってしまうことは、…私にもときどきある。他人はどうだか知らないけど。

そこから遡ると、この男は「一日何十回も、生きようと思ったり死のうと思ったりする人」なんじゃないのだろうか、と思えてくる。

原作読めってか…

気合い入れてもう一度観たい気がする。彼は遠い私の隣人だ。(私はゲイじゃないけど)

65点。