最近の再生(やがて来たる者へ, フロムダスクティルドーン)

やがて来たる者へ (映画)

内容を全く知らずに(ポスターと予告でざっと見たきり)行った。

序盤、ほのぼのとした村の描写が続く。「ミツバチのささやき」みたいな映画なのかな……? と思って観ていると、遠くからだんだん、地響きや落下傘部隊がやってきて、気がつくと村が阿鼻叫喚の地獄になっていた。

google: マルザボットの虐殺

パルチザンに荷担している村人たちには暗号がある。ドイツ兵がやってくるようなことがあったら、見張り担当が大きな声で隠れ家に向かって、「**、塩貸して!」と言うのである。

それを聞いた隠れ家の村人は裏口からパルチザン達を逃がし、自分は「あら、塩って言うから出てきたのよオホホ」と、なにくわぬ顔で塩を片手に表に出てくるわけだ。なんと牧歌的な……。

こういう村人の浅知恵(まだ、「なんちゃって」で許されると思っているふうに見える)が、ドイツ兵の本気のイライラに直面するあたりから、つらい展開になる。

戦争がつらい、というのとは、これはちょっと違う種類の「つらい」なんじゃないか。

「自分は現実を見ているつもりで、たしかにその現実に備えていたのに、実際直面したそれは予想を遙かに超えていた」という、普遍的な怖さに訴えかけるもの、なのかも知れない。

いやー基本ぼくら中立ですし、まさか本当に殺すなんて、ねぇ嘘でしょう? だってこないだまで楽しくやってたんですよ? と、村人も観客も思っている中、意味なくバンバンと人が殺されていく。

精神エネルギーの消費量で比べれば、今まで観た戦争映画では「炎628」なんかが追随を許さないが、前半と後半の落差からくる恐怖や救いのなさは「炎628」と同じくらいあった。

映画のポスターには、主人公の少女の顔が大写しになっていて、目を引く。ポスターでは15歳くらいに見えるが、実際には小学校低学年くらい。整っていて非常に美しいのだが、頽廃を感じさせる顔でもある。この顔がかなり映画を支えている。

フロムダスクティルドーン (DVD)

「ooh..」と声を上げてたら終わった。野沢那智/大塚周夫/広川太一郎という、吹き替えでみざるを得ない面子。