選評

<A賞>
「糠」「null」「盗」「ぬめり」など、マイナスイメージのある言葉のおおい「ぬ」世界で、人に「おっ」と思わせる言葉を探すのはなかなか難しい。古語にまでさかのぼれば様々あるが、あくまで私の理解の及ぶ範囲ということで、絞らせていただいた。
烏の濡れ羽色とはよく使うが、濡れ羽色単体ではなかなか出てこなかったのが意外。
ヌーブラ携帯ポシェットは存在そのものが謎。ヌーブラカップを張り合わせて野球のボールのようにして持ち運ぶ、ポシェットのようなものだろうか。だとしたら愉快だ。そのあたりのイマジナティブな部分を評価した。
そんな中で、「盗」からはじまり植物の名前になるという、さりげないたたずまいながら、静かな主張の感じられる「盗人萩」を選んだ。複数回答があったので、先に回答いただいたDocSeriさんにポイントということにしたい。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/nusubitohagi.html


<B賞>
ワードバスケット」というゲームから見たとき、優れた言葉の要件は、1)「投げた言葉によって他プレイヤーを感心させる/ひるませる」、2)「かつ、投げた言葉によってゲームの流れを滞らせない」ということだと考えた。
自分しか知らない専門的な言葉を使っても、他のプレイヤー全員がその言葉を知らないのでは、通らない。実際のプレイでは、そのような専門語で有無を言わさず押し切ってしまう勝ち方も存在するが、それを繰り返すと、「勝ちのためならオレ語も辞さない」、ダーティーなプレイヤーになってしまう。
だからといって、他のプレイヤーが出しそうな言葉を出していては、相手を動揺させることができない(本問においては、「ぬりえ」「ぬいぐるみ」が該当する)。
この「動揺させる」というのが大事で、ワードバスケットでは、脳のスイッチが入った状態になると、連続して何語でも言葉が出るのだが、いったんそのペースを乱されてしまうと、同じカードを持っていても、ぱったりと言葉が出なくなってしまうのだ。自分は平常心で、一風変わった言葉で相手のペースを乱す。これが基本戦略である。

この点に重きを置いて、投稿いただいた言葉を眺めてみた。

古語・人名・植物名・アニメ用語・その他固有名詞は、面子と使いどころによっては「通し」ではあるものの、その特殊性の割に「ひるませる」効果に乏しいと、判断せざるを得ない。専門用語は、出す側も受ける側にも躊躇があり、ゲームが滞ってしまうので「強い」とは言えない。

専門的なのかもしれないが、とりあえず素人にも説明不要、というレベルの言葉が望ましい。「その言葉がなんかわからんが、こいつすごい…」と、相手に思わせることが、有効なのではないか。

そういう意味での「ヌメリスギタケ」である。見たことも食べたこともないが、おそらくあるのだろう。そしてキノコの名前を知ってるなんてなんか手強そうだ。ゲーム中にそういう印象を、与えることができれば、こちらのペースになったといえよう。

ヌクレオチド」は、もっと純粋に、「なかなか出てこない言葉を見つけてきたことへのびっくり感」を引き起こすことができる。高校で生物を習ったなら、耳にしている筈なので、それほどマニアックな言葉ではないのではないか。しかし実際に、「ヌクレオチド」にたどりつくのは難しいと思った。

「抜け毛予防薬」。「濡れ」「ヌル」「盗み」といったマイナスワードの中でも、「抜け毛」という言葉のマイナスイメージは強く、実際のゲームで使うのもためらわれる。それを、「予防薬」という言葉で反転させたところに意外性を感じた。

さて残る2つには、いくらかダーティーな印象があるが、この程度のダーティーさが、ゲームの中では適切に機能する。相手が笑い出してしまうのだ。正直、ワードバスケット1プレイに勝つことに、そんなに価値があるわけでもないのだから、同じ出すなら、場の雰囲気を和ませられればそれでいいのではないだろうか(おい! 今までの話は何だったんだ! )。

「抜きキャバ」は最初「ぬききゃば」という音を聞いたときのわからなさと、意味がわかったときの落差に妙がある。だがやはり、下ネタであり、使うシーンを選ばなければならないところが、難しい。

沼津市役所」は、その脱力加減もさることながら、ゲーム的にも、その明証性による強さを評価したい。沼津市という市を知っていれば、市役所が存在するということは明らかなので、出した言葉に「待った」がかかる可能性は非常に低く、出す側も安定して出せるのである。理想的な複合語といえるだろう。


<C賞>

シークレットは、「ヌプシャルシート」でした。

最近披露宴に出たことあれば、けっこうすんなり出てくる言葉だと思ったんですが…もしかして、地方限定?