books: 『46番目の密室』,有栖川有栖,講談社文庫,ISBN:4061858963

読者が謎を解くことを前提にして、読みながら仮説を立てて「能動的に」小説に向かってないと、最後の謎解きで「へー」で終わってしまう、そういう種類の小説。その意味ではじつにエラリー・クイーンに似ている。有栖川有栖がそういう作家だということを忘れていたので「へー」という感想になってしまった。おれはプロセスよりも「とにかく騙してびっくりさせてくれよ!」という受け身の読み手なので、こういう仮説重視型のものは正直肌になじまないのだが、考えたぶんだけご褒美がある(自分の考えに穴があったことがはっきり判り悔しがれる)というのも、楽しいと思えるようになってきた。

ミステリに対して自覚的・自己言及的なところも面白い(密室ミステリの大家が密室で殺される)が、これはまぁひねた言い方をするとだいたいどういう話でも自己言及すれば多少は面白くなるんじゃないの、ってことで、どうでもよい。真面目な作家だとは思った。