日記
日記を書く気があまり起きないが、自分の日本語に飽きているのが大きな原因ではないかと思う。常態としてもっとましな日本語が読み書きできるようになれば、自分のつきあいも変わるだろう。そしてそれを変えたいと思う。
日本語という言い方は、ここでは、情報のI/O一般を指す。「日本語読めないの?」と人を罵るときの「日本語」の語意に近い。
話変わる。熊本市の繁華街にあった紀伊國屋が閉店してしまった。昨日外から眺めたら、1Fでは本を段ボールにつめる作業をやっていた。店じまいをするのだからあたりまえのことだが、その光景に少しうろたえた。6月30日を境にして、忽然と紀伊國屋が消滅し、その跡の空間を左右のビルがふさいで、そこになにがあったか忘れてしまうか、それともその跡にスロットの店がこれまた忽然と出現しているか、どちらかだと思っていた。
本は情報ではなく物体だから(そうなのだ)、店をたたむのであればそこにあったものを片付けなければならない。1Fで段ボールに詰められている本のいくらかは、もっと熱心に本を読むところの並行世界の私ならば、すでに買って、自分の本棚に並べているはずのものだ。しかしこの世界の私はそうではない。この世界で私の本棚に並ばなかった本たちよ、ごめんなさい。
円城塔「S.R.E.」を読んでいる。紀伊國屋がなくなってしまったので、ツタヤで買った。SFとして価値があるのかどうかわからないが、今こうやって、ちょっと日記を書く気になったのは、「S.R.E.」を読んだ(最後まで読んだわけではない)からだと思う。もはや自由などない。しかし、ない、とあきらめたとき、私にとっての自由を見つけることがある。
Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
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