Wii Music

ここ10日そこらはWii Musicなどやっていた…と淡々と書こうと思ったが、ちょっと興が乗ったので長めに書く。

ちょう楽しいので毎日やってますよ…。

Wii Music

Wii Music

このゲームの正しいタイトルは「耳を鍛える大人のWiiレーニング」

なんかひょっとして、このゲームの意味って、大人にあんまり正しく通じてなくて、全く売れてないのかも知れない、と思うので、大人こそこのゲームを遊ぶべきであると宣伝しておきたい。

コントローラを振りさえすれば気持ちよく音が鳴る=子供もお年寄りも楽しめる…というのがセールスポイントではあるのだけど、CMやニンテンドーチャンネルの動画ではそこがクローズアップされすぎている気がする。

たしかに「楽器ごっこ」ではあるけれど、案外きちんと作られているので、大人の「ごっこ」にも耐えうる幅がある。適当に振ってもコードとスケールに合った音が出る、ということは、逆に言えば、それ以外の部分=リズムやアレンジをちゃんとやってね、ということだ。大人にとっては、このゲームは、音楽のなかのリズムとアレンジとアンサンブルを体験する遊びになっていると思う。

音に合わせてコントローラを振って気持ちがいい、というのは、あくまで道具としての前提であって、その道具を使って、なるほど、この音楽ってこんなふうにできてるんだ、と体で理解していくことが楽しい。

このゲームのメインのエディタでは、演奏する譜面に<音ゲー>のような正解はない。そんなものを設定しなくても、自分の知っている「あの音楽」を真似して作りたくなる。お題の曲を、頭の中の「あの音楽」ふうにアレンジして演奏できないか、考え始めるわけだ。

「あの音楽」とは、自分が今まで聴いてきた音楽のことなのだから、音楽を聴いてきた時間が長い大人のほうが楽しいし、長く遊べるにきまってる。

リズム

幼稚園の子供達に遊び方を教える、ニンテンドーチャンネルの映像*1の中で、戸高さん(とたけけの人)が、楽器にジャズドラムを選んで演奏する様子が、ちょっと映る。これが、えらくかっこつけて、リモコンを振っている。幼稚園の子供相手にやってみせているのだし、リモコン振ればドラムの音が出て楽しいよー、と胸の前で適当に振ればよさそうなものなのだけど、ちゃんと目の前に太鼓状の何かがあるように見立てて、コントローラを振っている。

(…という脳内映像だったけど、今みたら戸高さんドラムやってない…どっか別の映像だったんでしょうか…それとも妄想でしょうか…)

(追記2.コメントで教えていただきました。上に書いているのは任天堂カンファレンスの映像のことでした*2。)

自分がその場にいても、そうしていると思う。なぜ、そうしたくなるかというと、そうやったほうが気持ちよくノれるし、これは「ノる」ゲームだから。

大人が「音を出すおもちゃ」と思っている期待値をかなり上回って、コントローラのレスポンスがいい。強弱もそれなりにつけられるし、打楽器で上下動を誤認識して両方で鳴らしてしてしまうことも少ない。意識して微妙なタメもつくれるし、そもそもリズムをキープするのがすごく難しい。このレスポンスのよさが、大人がノることを許してくれている。

アレンジ

一人でも、この「思ったより感覚的に操作できるコントローラ」を使って、自由にパートを選んで、課題の曲を組み立てていくことができる。これが、宅録みたいで、ものすごく楽しい。音楽の好きな友達と遊ぶと、もっと楽しいと思う。ライブ演奏というより、録音スタジオで遊んでる感じに近いんじゃないだろうか。

大人は、こういうものを知育玩具として子供にあてがってないでまじめに遊べよ…と、思うのだった。

可聴域の狭さを知る

しばらく遊んでると、あぁーオレって趣味=音楽鑑賞とか思ってるけど、実際には3種類か4種類くらいしかリズムを知らないんだな(8ビートに飽きたらちょっとタメたり、シャッフルにしたり、あとのりにしたり…それくらい…)、音楽のこと全然知らないんだ、っていう気になる。それで、今までなんとなく聴いていた音楽にも、リズムやアンサンブルという側面から興味が涌いてくる。

自分の場合だと、ここ数日、トーキングヘッズとか聴けるようになってきた。「リメイン・イン・ライト」とか名盤って言われてるわりに全く意味不明だったけど、これ遊んだ後で聴くと、ちょっときこえ方が違った。

どう違うのかうまく言語化できませんが…まぁあの、リズムって楽しいな、と。

Remain in Light

Remain in Light

SIGN 'O' THE TIMES

SIGN 'O' THE TIMES

…で、そう思った後、Wii Musicのアレンジパターン一覧を開くと、世の中にはほかにも、「クラシック」や「ジャズ」や「ラテン音楽」みたいに音楽のカテゴリが沢山あることを思い出す。そして、そのそれぞれに、ポップミュージックでいうところの上のアルバムみたいな、磨かれたリズム認識やすぐれた演奏があるのだ、と思うと、めまいがする。自分が死ぬまでの間にそういう音楽のどれくらいに会えるだろうか。それに実際の音楽には、メロディやハーモニーというものがあって…(くらくら)

Wii Musicの曲数は有限でも、そこから自分の中に開かれる音楽は無限だ。

地味

このゲームを「全部三味線で弾いてみました」「速弾きの限界に挑戦」みたいに遊んだ、奇をてらったような動画がニコ動に上がっていたりするが、そういうの見ると、もっとみんなちゃんと原典の音楽を聴こうぜ…おれもいろいろ聴くからさ…って気分になる。

(いや、自分はニコ動全般についてそんなふうに思ってるのだけど…)

かわった演奏を聴くより、地味な演奏の中に「なるほど、こうやってリズムを作るのか」ってことを聞き取れるようになれるほうが、ずっと面白い。

面白いというか…これは音楽を売るためにも必要な教育じゃないかと思うんだよな。コード進行やメロディだけじゃなくて、ちゃんと演奏を聴きましょう、という。コード進行が同じだけで「だから最近のJ-Popはつまらない」と断罪しちゃう耳では、Wii Musicの「きらきら星」一曲でなんぼでも遊べることが、説明できないと思うのだ。

基本的にはキモい(だがそれがいい

【このゲームが好きなオレはこんなゲームも遊んでいます】

一人で遊ぶ場合は、おれの心の盆栽ゲー「DEPTH」「パネキット」と同じ場所に並ぶことになる。(今どっちもダウンロード販売で遊べるらしい。いい時代ですね…)

DEPTH

DEPTH

パネキット

パネキット

すごく好きだし、ほっとくと無限に遊んでしまうんだけど、たまに我に返って、そういう「ごっこ」で満足してる自分がキモいと思ってしまう点で、共通している。

結論としては、音楽が本当に好きならこういうおもちゃで遊ばずちゃんと楽器習ったほうがいい…のだけど、プレイヤーにならなくてもリスナーとしてこれだけ主体的に音楽に関与できるということは、よいことだとも思う。