日記 (candy says)

a.

例の本のことを書くのも最後にしたいので、栗本薫中島梓)の解説を読んだ。<これは哀しくて怖い話だと思うが、自分の夫は「哀しみも怖さも感じない」という>……といったことが書かれているのだが、その書き方そのものがディスコミュニケーションの産物と読めなくもない。ご主人は「感じない」とまでは言っていなくて、感じたがわからない、と言ったのを、こんなふうに解釈したのかも。つまりは、語りが、小説から地続きになっているようで……解説にまで<信頼できない語り手>のトリックが……何も信じられない……。

などと冗談のように書いてみるが、実際、そのようにして、この本は特別な本になったのだろう。

私も死ぬまでに何度か読むと思う。でもそれはこの本が、読者の言葉を奪う(わかる、と言っても、わからない、と言っても、何か嘘をついたことになってしまうので、「ひたすらかなしい、恐ろしい」というほかない)という性質を、つよく持っているからだということを、勘案に入れてもよいのではないかな。

ハヤカワNVでもらっていた本とは別に、クリスティ全集の一冊で買った。特別だから買ったのかもしれないし、「おまえ、特別な本だと思われているみたいだけど、おまえは所詮は本なのだし複製可能なものなんだよ」と思ったから、買ったのかも。

b.

日記エントリをa.やb.などとパート分けしはじめたら、病気の再発を疑ったほうがよい。

紙に日記を(ここに書いている「日記」は日記ではない)つけたいとも思うが、フリーフォームだとすぐメモ書きになってしまうし、形式が決まっていると、そこを何かで埋めようという気持ちが働くので内面吐露になってしまってこれも破綻しそう。「二日前の夕食を覚えていますか?」「この写真はいつどこのもの?」みたいな質問に楽しく(ゲーム感覚で……)答えているうちに勝手に日記にしてくれるようなソフトウェアがあればいいんじゃ……よくありません……。

再生

査収

  • ミステリが読みたい! 2010