1.『メルカトルと美袋のための殺人』

メルカトルと美袋のための殺人 (講談社文庫)

メルカトルと美袋のための殺人 (講談社文庫)

はてな年間100冊読書クラブ」。
風呂敷ひろげてやっぱ麻耶雄嵩かよ…。
ま、気負うのがいちばん長続きしないので。

動機

麻耶雄嵩だから。

内容

変人探偵、メルカトル鮎と、ワトスン役の美袋三条が活躍する、ミステリ短編集。

感想

話者の認識異常、叙述トリック、超自然現象、ホームズのパクり…本書で扱われている題材は、そのまま書けばバカミスになってしまうんだけど、その中に精緻なロジックや意外な捻りが盛り込まれていて、楽しめた。いままで読んだ(古典の)ミステリ短篇にありがちな、「そりゃそうだけどさ…」という薄味感は皆無。勘弁してくれ、というくらいに屁理屈をこねてもらえる。
最も短篇らしいひねりが効いているのが「小人輭居為不善」。ただし、推理やトリックにひねりが効いているのではない。話は完璧に、「シャーロック・ホームズが偉大な観察力と推理力を発揮して、飛び込みの依頼人の真意をあばきワトスンを感心させる」という型枠にはまっている。それが最後の1ページで、突如として嫌な味わいの話に変化する。
延々と変梃な話ばかり読まされるので、最後のストレートな「シベリア急行西へ」が、一番異様に見える。
キャラクタ造形の嫌らしさが気にならなければ、ロジックの積み上げ具合を確かめるために再読したくなる、短編集だと思った。

接続

麻耶雄嵩の本はあと3冊。これはまぁぼちぼち適当に。ミステリ短篇は、これくらい過剰なほうが好みなので似た系統を探してみたい。