日記

髪切ってそのまま帰るのはなんなので、ツタヤに寄った。知り合いにばったり会う。

二言三言言葉を交わして、会話がとぎれがちになる。「あ、そうそうそういえば、この間マジックを見せてくれる飲み屋に行ったんですけど…」と、上着のポケットをもぞもぞして、かれはカードの切れ端を取り出した。1/6ほどのエリアが切り取られたスペードの3と、切り取られた切れ端のほうの部分を手渡された。くっつけるとぴったりになる。

何か見覚えがある。大学の時、同じようなマジックをする店に行ったような記憶がよみがえった。その店なのだろうか。相手の話を遮るように「これ、こっちの残った大きい方もビリビリに破いて…それが元に戻っちゃうんでしたっけ」とか先回りして話してしまう。手品の話を聞く聞き方としては最悪だ。

さらに「しかし、今の話、おれはそのマジックを見てないわけだから、**さんの話の中で、こういうマジックだったよと聞くほかないわけですよね…こうやってカードだけ見せられて…」と、さらにしょうもないことを思いつくまま半笑いで話す。うまく利用して立場を入れ子にすれば、手品詐欺みたいなものが成立するかもしれないと思ったのだが。

そのまま別れて自分は文庫の棚から『黒後家蜘蛛の会 3』を買った。根気が続かないので短編が読みたい気分。しかしドトールで開いて読み始めると「なんちゃらの十字架」…見覚えがある…あぁこれはおそらく重複買いである。

実は『黒後家蜘蛛の会』は好きではない。この日記のどこかにも、おれはヘンリーが嫌いだ、と書いたはずだ。重複して買ってしまうのはまぁ仕方がないとして、よりによってそれが好きでもない『黒後家蜘蛛の会』だなんて、なんたる間抜けだ!

…と、翻訳調で腹が立つのかと思いきや、そうでもない。むしろ楽しんで読んでいる。謎解きは相変わらずどうでもいいが、会員制のクラブでいい大人が雑談でむきになっているところが好ましい、と思えるように、感じ方が変わったのかも知れない。

段ボール部などのボドゲ活動が枯れていくと、そういう感じの大人の集まりになるのかもしれんな、と思った。しかし探偵小説にはなりづらいのではないか。登場人物の半分くらいが「エンジニア」(おれのような雑役も含めて)だと話が盛り上がらない。