戦場でワルツを

ここに描かれたものをくみ取るには自分の頭と心の水瓶は小さすぎる。

予備知識なしで劇映画のつもりで見に行ったら、アニメで描かれた(ほぼ)ドキュメンタリーだった。

事実を観客につきつける方法として、あのやりかたは発明なのかも知れない。現実には不可能な映像が作れるし、繰り返し、違うアングルから一つの場所を描くことで、その場所への慣れを作り出すことが可能で、それゆえ、ラストの映像が衝撃的なものになっている。ちょっとこたえた。

でも、「いろいろ調べていったら、封印していた記憶が断片的に集まって、秘密が……グルグルグル、ドーン!」という、ストーリーの構成自体は、ちょっとどうなの、と思ったりもした。

「秘密っていっても、結局オレ傍観者だったんじゃん……!」というのは、逆に重たい。これは昨日のドラマと同じか。

レバノン内戦について調べる」をタスクに書き入れた。そのへんまで含めてパッケージされた映画だと思ったので。(つまり、自分にとって、まだ映画は終わっていない)

この映画が、そういう、後を引くものを持っているのは、いいことだと思う。でも、これを他の映画と並べると、自分の教養レベルで楽しんで観られたかどうかは、微妙。

記憶が都合良く封印されていて、都合よくアンロックされていく、という全体の趣向があって、これはさすがにフィクションだと思うのだが、話を進めていくはずの、その、ほぼ唯一の趣向が、観客に強く興味を持たせる仕掛けには、なっていないと感じた。封印された記憶のロックを外そうとさまよう、という設定ではなく、単にジャーナリスティックな興味で調べてるんです、という話でも、ほとんど同じ映画になる気がする。

娯楽映画じゃないからそんなことはどうだって……かも知れないけど、じゃぁアニメで見やすくした意味はなんなのよ、ってことにもなる。

あと、こういう映画を作るのなら、虐殺とは別に「知っていること」「知らないこと」「知っていて語らないこと」「知らされてないこと」が、大きなテーマになりえると思うんだけど、そこはあまり意識されてないように見えた。主人公の映画監督は、他人の言うことを真に受けて行動しすぎ。

おもしろいか、つまらないか、でいうと、昔見た「エンゼル・ハート」よりは、つまらない。

49点。