ファッションが教えてくれること

月曜なのに(当地では月曜日が男性1000円)女子が多い……やばい、場違い……と思って見始めたが、なかなかどうして痛快な映画だった。

…あ、そうか、1日だから女性も1000円か。

VOGUE編集長のアナ・ウィンターと、彼女の周りで仕事するスタッフが、VOGUEの9月号(映画の原題は "the September Issue")を完成させるまでのドキュメンタリー。米国のファッション誌は、9月号が最も気合いの入った号になるとのこと。

プロフェッショナル 仕事の流儀」みたいなものを想像すれば、だいたいあってる。

クリエイティブディレクターのグレイス・コーディントンが、アナと反発しながらいい仕事をするように描かれていて、映画としてまとまっていた。

おれのような男が見ても楽しめたのは、雑誌が作られる舞台の中心が「台割」に設定されていたこと。9月号の台割のページが、着々と埋められ、差し替えられていく上で、スタッフの我がぶつかりあう、という筋立ての映像で、興味を失わずに観ることができた。

この「台割」という、可視化の道具がなかったら、この映画は、単なる我の強い人たちがあくせく働いているようにしか見えず、おれは観ながら「えらそうに口でピーピー言うなボケ」と思っているかもしれない。

ラストに、グレイスが「この映画を撮影しているカメラマン」を、最後の写真撮影に引っ張り出して、映画が撮影していた9月号の中にはめ込んでしまう、というのは、ドキュメンタリーとしてはできすぎなほど。そして、そのカメラマンの写真を使うときの心遣いが、またにくい。自分がこの映画の監督なら、この展開が撮れただけで「勝った!」と思うだろう。アナがグレイスのことを評して「天才ね」と言っていたが、ひらめきでこういう展開を作ってしまえるのは、やっぱり、センスなんだろうかね。

はっとする絵がたくさん見られたし、よかったです。

58点。