今日の再生 (ドラキュラ)

ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』

19世紀の風俗を知りたいと思ってこういう本を読むのは、20世紀の風俗を知りたいと思ってホラー映画を観るのと同じかも知れない。50ページくらい読んだだけだが、つかみ・状況のセッティングは抜群にうまい(が、それで19世紀末のことが何か克明にわかるわけではない)。どこからがストーカーの創作か、これだけでは判断しかねるけど。

当時の人が不快感や不安を覚えたであろうもの(外国旅行、東欧、偶像崇拝、夜の農家、田舎の名士、口臭、監禁……)がこれでもかとちりばめられていて、読んでて怖い。何かをされる怖さよりも、なじみのないものに取り囲まれて日常と切り離されてしまう怖さがある。

吸血鬼がどうとかこうとかいう民俗学的な検証にはあんまり興味がない。当時の人が何を「怖い」と思ったか、というところが問題で、ストーカーの「ドラキュラ」はうまいことその不安にはまるような設定を、吸血鬼伝説の器に盛り込むことができたのではないのだろうか。


ドラキュラの世紀末―ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 (Liberal Arts)

ドラキュラの世紀末―ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 (Liberal Arts)

こういう本もあるみたいだ。

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

ヴィクトリア朝とドラキュラといえば、キム・ニューマンのこれが有名らしい。ドラキュラがアルバート公の代わりにヴィクトリア女王の婿に……なにそれ……興味ある……。


シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険 (河出文庫)

シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険 (河出文庫)

どんどん荒唐無稽に。でも楽しそうだな……。