インビクタス
所謂「傑作」の風格もなく、愛すべき映画というわけでもなく、直球ど真ん中のメッセージ。
ラスト30分、延々ラグビーのシーンが続く。
これを俺の中のvm宇多丸(まだこの映画を扱ったぶんのポッドキャストは聴いてない…が、だいたいこんなことを言ってはるらしい、というのは目にした)が解説すると:
マンデラはラグビーを政治利用しただけじゃないか、という言い方も、できなくもない。それはそうかもしれないが、この映画が言わんとしているのは、あの30分のラグビーシーンを可能にしたのは何なのか、ということなんですよ。どのように可能にしたのか、How、ではなく、何がそれをなしえたか、という、Whatがテーマなんです。
(中略)
劇中、大統領が、メンバーの練習する中にヘリで降りたって激励をする、というシーンがありましたよね。あのシーンの前の数カットが、僕は印象的だと思ったんですけど、こうまず、街並みを俯瞰するショット、そして練習を見下ろすマンデラ、そして着陸、と続きますね。つまりあれは、あそこで行われているスポーツという営み、それに代表される人の自由な営みを、何があっても守る、という、マンデラ自身の視点と強い意志を表しているんですね。
(中略)
ですから、あのラグビーのシーンは、僕はこういう意味だと理解しました。「ここまでの話で、メッセージの枠組みは作った。あとは、試合を存分に楽しんでくれればいい。そして、そんなことが可能であるという喜びと、それをなしえた意志の力に、思いを巡らせてほしい。」
(中略)
できれば映画館で、一人の観客となって、ラグビーの試合を応援するように観るのが、おすすめです!
…とかなんとか。
最初、マンデラのしたたかな性格が少し描かれ、政治的な技術が世界を変えていくような描かれかたなのかな……と、思えるが、それはあっさり梯子を外されてしまう。政治的にしたたかであることと、意志を持つということは、両立しうるのだ。
マット・ディモンが時々いい顔してた。最初の一勝が決まったときの、感動と興奮で泣きそうな顔とか。
モーガン・フリーマンの普段の芝居(というか、今の年齢体調から出てくるデフォルトの演技)をよく知らないけど、背筋に緊張を湛えて、簡潔な言葉でメッセージを語る姿は、いかにも、酷い目にあった後の人っぽく見えた。
なんということはない話の筈だが、全体的に、全く退屈しない。説明がじつに、手際よく、過不足ないってことなんだろうな。
78点。