トスカーナの贋作

訳がわからなかったので、5月と6月の2回観た。

story

感想

流れるような長回しと、飛んだり戻ったり仕掛けたりの会話がとてもよい。

舞台になる観光名所の(近辺の新婚カップルが軒並み訪れる、的な、地元のちょっとした名所みたいな感じだけど)全景を撮らず、いきなり投げ込まれて歩かされるので、本当にそこに行った気になる。

「なぜ子供の苗字のことはタブーなのか」「5年前フィレンツェで親子に何があったのか」を中心に、謎めいている箇所は多い。しかしおおかた、普通に想像できる範囲ではないだろうか。

そういった物語の秘密よりも、「気がついたら初対面の女となぜか安宿のベッドの上にいた」というエンディングに流れ込んでしまう作劇の秘密に興味がいく。画面の中で、常に何かが起きていて、それに注意しながら観ていると、気がつくと映画が終わっているのだ。全く退屈しない。そして最後、男と同じように8時の鐘を聴きながら心迷う自分を見いだす。

なぜこんなことに…? 一回目は終始、女(ジュリエット・ビノシュ)のほうが気まぐれで不可解な存在にみえたのだけれど、二回目は、女も男(ウィリアム・シメル)と同じように、虚構の影響を受けてしまっているのだな、というふうにみえた。女は、自分が仕掛けた虚構の設定に、あつらえたようにハマってしまう(性格、イタリア語だけが話せない言語コミュニケーションの不完全さetc)男に、運命すら感じたのではないだろうか?

1回目76点。2回目84点。