2011年の映画 ふりかえり (2)
年はあけてしまったけど、まだ途中だったので続ける。
15. ボルベール
全く予備知識なしで観た旧作。ほとんど女しか出て来ない(力仕事も売春婦のふとっちょの女と一緒にやる)。「そこに死体が……」というサスペンスと思いきや、親子の情と業が交錯するドラマになる。ものすごく絵がいい、というわけではないが、色彩鮮やか。
13. ヒアアフター
「イーストウッドの大霊界」とかじゃない。津波はなおさら関係ない。自分の頭の中にあるものを言葉にしようとすることで孤独になってしまった男と女が出会うまでの話。マット・デイモンは本当は心を読んで言語化するだけで霊媒ではないのだが、それを周囲が霊媒だと誤解しているように取れる。だから、「ディケンズの夢」とか「朗読のファン」とか「目隠しで味のあてっこ」がマット・デイモンのパートで出てくるところには、意味があるのだと思う。
12. ブルー・バレンタイン
「昔こう、でも今こうなんだ、テヘヘ」っていうだけの話に終わらず、情報の出し方を緻密にコントロールして、夫婦の時間の重さそのものを感じさせる手際が素晴らしい。気がつくと、主人公夫婦と同じように「どうしようもない」場所にいる。
11. エンジェルウォーズ
何にも考えてないわりには象徴的だと思う。鏡と「あるべき私」の関係。あとエンディングのロキシーが最高すぎる。
10. ミッション:8ミニッツ
週刊文春の千街さんのコラムにまた「最後が蛇足」と書いてあった。それがそんな大事なことなんだろうか……窓の外を見せない「恋はデジャブ」、ボートを見せない「ショーシャンク」はありえないでしょう。それはともかく「結局主人公は**の**を****たまま生きていくわけ?」という疑問に「いやー、どうせ拾った命だからさ……」と答えそうになってしまうのは私が薄情なせいか。
9. トゥルー・グリット
心地よさ、ラストの西部ショーの切なさ、いいと思うんだけど、細部を思い出せない。夜の襲撃のシーンと、その前後のマット・デイモンさんの「蹄にたまった水を……」の話がよい。カウボーイたちの常識の世界から別の世界へ。穴の中の死をのぞいて帰還する。
8. 冷たい熱帯魚
骨に向かって「元気でなー!」と叫ぶところがアドリブだと知り戦慄した。
7. ザ・ファイター
「誰のために戦うとか関係ねぇ! ぶっとばす!」という盛り上がりをラストまでに準備して、主人公の問題を一応きちんと全て解決する。あとはぶっとばすだけ。痛快な映画、っていうのを普通に楽しめるよのなかであってほしい。