言葉の発明

「小説」そのものおもしろさを、要領よく言葉にして、伝える人*はリアルにも、そして特にネットの海にもたくさん既にいるんではないですか。

確かに、SFやミステリという分野であれば、ものすごくストレートに、それはイエスだと思うし、実際自分も、ネットに上がっている感想を大きく参考にして本を選んでいます。それだけでなく、自分でも感想を書く側になってみたいと思い、こうやって日記を書いています。

また、学校の先生だけが、そのようなブックガイドになるべきだ、とは思わないし、それは誰がやってもいい。

しかしながら、エンターテイメント要素の少ない小説に関して、SFやミステリと同じことが言えるのだろうか、と思っているわけです。エンターテイメントであれば、「面白かった」「びっくりした」ということを言葉にしていけば、それなりに人に伝わる感想になると思うわけですが、いわゆる文学についてそれはできるのか。

勿論「文学」においても、本の紹介をしてもらうだけなら、先生でも、図書館でも、かまわないと思うのだけど、それは、詳しい友達に聞くのとあまり変わらないような気がする(レファレンスサービスを利用したことがないので、どこまで詳しく教えてくれるかわからないのですけど)

SF/ミステリ(特に本格)において、なぜ、素人感想がそれなりのブックガイドになりえているかというと、それは「ワンダー」や「トリック」や「フェア」などの、了解事項になる概念があって、その概念の足場の上に感想が書けるからだと思うのですね。

そういう、共通の概念がない状態では、基本的に、いくら面白いものを読んでも、「面白かった!」しか言えないと思うわけです。あるいは、(手持ち概念の乏しい)こどもの読書感想文と同じように、「ところで私の父は…」と、自分語りに陥るか。

結局自分と作品の関わりでしか、作品の鑑賞なんてありえないのか。そうではないから、かりにも文「学」と言われているのじゃないかなぁ…。