SF的/ハードボイルド的

大学の文系のキャンパスはものすごくさびれたところにあって、生協も理系とは違って小さくて汚くて、おまけにプレハブだった(これは、工事だったのかもしれない)。そういうところの学食に置かれている、ビラを見てはよく、薄ら寒い気持ちになっていた。中核だか革マルの人たちが三里塚のことを書いたもの(よく知らない。三里塚ってなんだろう)。あと、あきらかに頭のおかしい人が書いたとおぼしいもの。

「アルミサッシのカドで杳を生成する→6」とかなんか、意味のわかんないことがB4の紙いちめんに書かれて、コピーされて、ていねいにテーブルの上に置いてあった。友達はそれを手に取ると「見てみぃおっかしな奴がおるなぁハハハ」と笑った。友達が笑うたびおれはますます寒い気持ちになるのだった。

顔も知らない隣人。

中核だか革マルの人たちは、教養部ではときどきスピーカーを持ってサングラスとマスクとヘルメットをつけてアジテーションをしていた。それはおれの知らない理屈で動いている人たちだった。いちど校舎のどこかで、あたふたとマスクだけを首にかけて人相のばれる格好をして歩き回っているのを、見たことがある。それは知っている顔で、学生自治会か何かの代表として、出てくる人だった。

文系キャンパスに上がってもときどきすれ違う。

「つまらんつまらん、そんなん見とらんと捨てや、お前も頭おかしゅなるぞ」頭のおかしい人の書いたらしいビラを、ぼんやり眺めていると、友達が促した。

頭がおかしい人がいる、という危険認識じゃなくて、そういうおかしさが「正しい」って思ってる人が自分の近くに生きていて、これを書いてるってこと。その人からのメッセージが、これであること。そのメッセージを自分は理解することができないということ。

そういうことに対して、笑うよりもまず畏怖するべきなんじゃないのか、みたいなことを、考えていたのかも知れないが、捨てるふりをして鞄にその紙を入れた。