自動人形売り

となりの町に自動人形売りがやってきた、という話でその日の学校は授業にならなかった。先生は午後を休校に決め、子供達といっしょに自転車で湖を回って、町に出かけた。
町の庁舎前広場には、背広姿の者、野良着姿の者、町中から集めてきたのよりもっとたくさんの人でごったがえしていた。

広場の真ん中で、自動人形売りに背中を抱えられて座る自動人形は、学校で一番小さな子供よりも小さいくらいで、子供達はそれでずいぶん興味を失った。

「…画期的なのは」得意そうに男が、自動人形の説明を繰り返した「鍵になる<きまりごと>を教えるだけで、実に人間的な応対をするのです」

言いながら男は、赤い三角の書かれたカードを、観客によく見えるようにとり出した。つづけて、四角の中に三角がおさめられたカード、黒い稲妻の書かれたカード。それらを、男は、自動人形の背中に開いた細い穴から、放り込んだ。

「おいペドロ、ご挨拶をしなさい」

この続きは文章力の都合で書けません

…このあと、得意そうな自動人形売りに、神父が論戦を挑む。十字のカードは神を冒涜しているというのだ。これは単なる約束を書いた象徴であるからと言い張る自動人形売りに、職人や進歩的な学生が味方し、広場は侃々諤々の議論の巷になる。

そのうしろで先生は、自動人形の応対が、いちいち、あまりに特徴的に子供達のどれかを模写していることに愕然とする。

そのまま先生は、自動人形売りからカードの組だけを買って、家に帰ると、家にある全ての本を焼き払った。