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北村薫の本を寝転がって読んでいたら、珍しく足もとにメルカトルが寄ってきてパタパタと尻尾を動かした。 「本を読みながら声を上げる癖はやめないとみっともないぞ」 「…たまに自分から何か言うと思ったら憎まれ口か。ほっとけ、犬にはわからん」 「文章の…
(あらためて断るまでもないがこの日誌で私は多くの人名や地名を伏せている。やむを得ず人名を出す場合にはそれは必ず偽名である。【訳注:敢えて元著者が偽名を使っていると理解したものは、その発音に近い英語風の名を仮名で当てた。他の一般名詞の訳出にな…
「居住の目的をお願いします」一昨日馬具屋で出会った30代の男が窓口に座っていた。彼は緑茶の中毒か何かかも知れない。傍らに先日と同じ自分の茶の入ったフラスクを置いているが、すでに半分以上がない。 「一応なにか書いていただかないと、正式に国民登録…
図嚢も新調することにした。帰り道、中央駅の前にある、八角塔の集合店舗の前を通るときに気づいたが、この店舗は各面をひとつのブロックにして定期的に店が売っているものが変わるのである。今日は天井から床まで一面分を白く塗って、K市の隣のN町の宣伝…
台座から取り外しのできるランタンを買った。D村のあたりでは、夜は人通りも少ないので家々から漏れる明かりも少なく、こういうものが一つあるだけでとても心強い。買うときに油のぶん値段をまけて貰えた。込みで銀貨3枚。取り付け方をならうのに往生してい…
「…という話なんだ」 「実話なのか?」 「100年以上前のロシアの出来事だよ。そして、その話を元に作ったカードゲームが、これなんだ。」 と、にこやかに笑いながら、メルは懐からブリッジサイズのトランプ大の箱を取り出して、テーブルの上に広げた。
となりの町に自動人形売りがやってきた、という話でその日の学校は授業にならなかった。先生は午後を休校に決め、子供達といっしょに自転車で湖を回って、町に出かけた。
犬を風呂に入れていると電話が鳴った。 「もしもし、えーと…あの久木田です、わかりますか」聞いたことのある声だった。 「えーと、あの、はてなーの?」 「そう」 「久木田さんっていうか、アイディーメルキオールさん?」 「そう」 「うわぁ、お久しぶりで…
蕎麦屋で蕎麦を食ってると、カウンターに座っている隣の客が、すえおきの蕎麦つゆの容器からつゆを出す方法に、四苦八苦しているようだった。「すいませんこれあかないんですけど」と、店主に向かって言っていたので、「それ、上を押して出すみたいですよ」…
ごはんを食べていると、電話が鳴った。「…もしもし? そのまま黙って聞いてくれ。いろんなところからいろんな奴が典拠を引っ張り出してきて、議論の水位を上げようとする。これに反論できないならオレの主張は正しいのだ、ってね。でもそんな奴の挑発にのっ…
ちょっと足を伸ばして、前から気になっていた、新しくオープンしたスパゲティの店に行く。店内は落ち着いた雰囲気、昼食を食べるに堅苦しいということもなく、悪くない。カルボナーラを注文した。そういえば、カルボナーラなら誰でもおいしく作れるはずだ、…
昨日初めて友達に誘われてゲームしたんですよ、なんか「カタン」とかいう、六角形のゲームなんですけどね、サイコロ振って、そこから麦とか鉄とか資源を出して、家や街を建設するんですけど。一応考えるゲームなんだけど、なんかサイコロ振って、出たり出な…
昔は授業で道徳の時間があったのにそれがなくなったのが、あたしたちの堕落の原因だと真顔で言う人がいるという、でもそういう人は修身の時間がなくなったときに同じようなことを言われていたのだと思う。グレート。さてあたしのクラスであたしの角を巡って…
あたしの容姿について、外の世界ではいろいろ想像で書かれているかもだから、あたしも想像であたしの容姿を書いておく。身長156cm、髪は短くて黒、やせぎすで、こめかみから斜め前に角が二本生えている。角は骨格の一部が盛り上がっているもので、親不知と同…
目が覚めると見当識喪失ってやつで自分がどこにいるのかわかんなかった。弟と二人で「旅館ごっこ」をやって二階の廊下に布団を敷いて寝ているのかと思った。でもそうじゃなかった。ちょっと横を見ると昨日の親切な感じのひとが窓からこちらを伺っていた。は…
なんか面白そうなので僕も買ってきました(脳内で)。とりあえず外箱を左から開けると「こっちからあけちゃダメ!」とか書いてあるのはワリオ以来のオレへの攻撃態勢ですか。ふつう右手に持って左から開けない? それはいいけどその横に書いてある4桁の番号…
風邪で思い出した。母方の実家のある村は生姜の産地で、風邪をひいているものがいると、かならず生姜をすって、その絞り汁を湯に入れ飲ませる。飲みにくいときは砂糖を加えたりもする。これが効くらしい。 この間、祖父の法要で訪ねたときも、父が風邪をひい…