バイソン, Kramer & Kiesling

探検隊がバイソンや魚を獲って消費しながら移動を繰り返し、最後にその収穫量を競うゲーム。

というと、何をしているのかよくわからないが、所謂「陣取り」(エリア・マジョリティゲーム)。手番順に駒を地形に配置していき、4回ある決算でエリアごとの数を比較。各エリアで、最も駒を沢山置いた人が1位の得点、2位はその半額。…という、ありがちなスタイル。ラウンドが進むごとに地形が少しずつ増えていく。

途中で起きる決算の結果は、次のラウンドに使えるリソースになる。ゲームの勝敗は、最終ラウンドの決算の結果のみで決まる。

感想

インストを聞いている間は、派手な要素もないし、そもそも「ティカル」(1999)と同じような趣向じゃないか…胃が痛い…と思っていたが、これが意外なまでに傑作だった。

ひとことで言うと、資源と手番の使い方の無駄のなさが、中だるみを感じさせない。

臆測混じりに誉める

クラマー&キースリングのペアは、この方向性のゲームを、よく飽きずに作り続けていると思う。そのねばり強さは驚異的というより粘着と呼ぶほうが適当かも知れない。同じ作者の作った「陣取り」を扱ったゲームには、自分がプレイしたことがあるものだけでも「エル グランデ」「ティカル」「マハラジャ」等がある*1。「エル・グランデ」から数えれば実に10年、この手のゲームを作っているということになる。*2

その粘着の結果、「バイソン」は、傑作の誉れ高い「ティカル」よりもさらに無駄のそぎ落とされた、素晴らしいゲームになったと思う。ファミリーゲームの領域からは半歩(いやもうちょっと)はみ出してしまったが、2時間強のプレイ時間中「うーん、面白いねぇ」と感心する声が何度も上がった。

感覚的な表現で言うと、カンテラで照らしている足元の論理が明るく、なおかつ行動の選択肢が制限されているので、過剰に遠くまで明るすぎない。自由度が高い割には展開が散漫になっていない。逆に言えば、1ラウンドでできる手番は4回しかない割に、要求してくるロジックに幅があって、常に無駄なく動くよう考えさせられる。ジャストの時間で終わるハードロックを聴いているような高揚感がある。
リソースマネジメントを組み込んだ陣取りゲームとして、ひとつのマスターピースに近づいていると感じた。アブストラクトゲームに近い風格すらあるかも知れない。

その他雑感

各エリアで、頑張って張り合った1位2位よりも実は駒を一個だけ置いた3位がおいしい思いをする、的なごっつぁん(決して棚ぼたではなく、論理的に取れるごっつぁん)が狙えるので、3人か4人でのプレイがお薦めだと思う。
箱が小さいのもよい。
各リソースが見えづらいのと、得点計算がちょっとやりにくい(駒を除去しながら計算できないので数えにくい)なのがマイナス。基本的にゲーマーズゲームだから、計算くらい間違えずにやれるだろ、ということではあるが。
最初のインスト時、ゲームのガチンコさに、私はやや引き気味に「ちょ…そんだけ? 牛の貰える特殊カードとかないの?」と、尋ねた。しかしゲーム終盤には、この緊密なゲームにそんな要素を追加するデザイナーがいるとすればそいつは万死に値する、と全員が結論した。こんだけリソースにキリキリしてゲームしているところに、横からカード使って「はい牛3匹ゲットー」はない。ありえない。
ちょっと誉めすぎだが、それくらい誉めておかないと地味ゲーのひとつとして埋もれそうな気がするので。いや地味なんだけど。
これはプレイ中にひねり出した喩えだが誉め言葉として書いておく。「面白くて鼻血が出る」が、「鼻血が出るほど面白い」のではなく「鼻血が出るから面白い」のである。うはははは何言ってるんだ。弾幕シューターみたいな人がこの手の論理武装に強そうだけど、もう黙る。

商品情報

日本のAmazonで買えるようになったら、下のリンクに商品情報が出るはずです。

ASIN:B000EGADCK

*1:今調べたら、エル・グランデはKramer&Ulrichだった。

*2:カタンにおけるトイバーみたいに、この手のゲームしか作らせてもらえてないのかも、だが