十三人の刺客
痛快時代劇。時代劇? うーん……。
前半。意図的なことなのだろうが、役所広司の現代劇くさい芝居と、松方弘樹の遊び人まがいの喋りを、平幹二郎と市村正親が必死の芝居で抑えるという構図。
後半は盛り上がる。ボンクラ語で言うと、アガる。前半浮き気味だった松方弘樹は後半の柱になって、散漫になりがちな戦いを、場面場面で締めていく。主に顔で。あの顔芸を見られただけでもお金払って観る価値はあった。
稲垣五郎は、本人のキャラクターの持ち味を出しながらも、話の中にいい具合に収まっていてよかった。言うほど狂った演技だったわけではないけど、イメージよりも太い声が出ていたり、ただのアホの殿様ではない見せ所もあったり、役も本人もいい所が多い。
池宮彰一郎の原作がもとから軽いのだと思うけど、話自体は「サムライとは何か」について深刻に悩みたがっている人たちのドタバタ、という印象をぬぐえなかった。演出にもそれは感じられて、冒頭の筆文字から「ずぅ〜ん」というジャンプ漫画のオノマトペが張り付いている感じ。時代劇をやりたいのではなく、時代劇的様式美をやりたいのかな、と。しかしかといって、NHK大河ばりのめんどくさい本格歴史劇をやっても客はついて行かないだろうし、私も理解できないだろう。役所広司の軽い芝居は、全体のテーマの軽さを背負っているのかも知れない。
73点。