彼女が消えた浜辺

イランの映画。

とても現代的。想像していたような社会派じゃなく、状況の限定された舞台劇に近い。イスラムの女性の置かれた立場を描いているとはいえ、話の構成は「これ別に、イラン映画でなくてもいいんじゃ…」と思える内容。それだけ普遍性があるエンターテイメントになってるとも言える。

ラストの「家族みんなで砂に埋まった車を押す」シーンまで、計算された濃密な演出と脚本。

主人公の女性の振るまいが、ひどくずさんで、「なんでいっちいっちそんないらんことするの……」と言いたくなる。

確かに「ずさん」で「取って付けたような嘘と思いつきで行動してる」ように見えるのだが、映画の中心になる「事故」が起きることは、誰にも予測不可能だったのだから、主人公のずさんな行動は、「事故」が起きていないことを前提にして、その真意を考えないといけない。なんのために、****したのか? ひょっとして最初から****する気なんてなかったんじゃないのだろうか?

……なんてことを、観た後、映画部部員と喋りながら手帳にだらだら書きなぐっていた。そこまで考える気にさせる緻密さがある。ミステリ好きに是非。

84点。