リッキー

8本目。月8本でも年間100本行かない……まだ「映画でもいっとくか」というペースではあるので、もう少し余裕はある。しかし一本平均1,300円で見てるとして……考えないようにしとこ……。

cast

カティ アレクサンドラ・ラミー --
パコ セルジ・ロペス パンズ・ラビリンス」「ナイト・トーキョー・デイ」
リザ メリュジーヌ・マヤンス --

story

カティは工場に勤めるシングルマザー。職場で知り合ったパコと、成り行きでつきあい始め、男の子供を産む。娘のリザは、新しい父親と新しい弟に家族を乗っ取られそうで、気が気でない。

生まれた子は「リッキー」と名付けられた。リッキーは背中が痛がって泣く癖があった。ある日カティがリッキーの背中に痣を見つけて、子守をしていたパコを責める。腹を立てたパコは家を飛び出す。リッキーの背中の痣は、日を追う毎に瘤になり、だんだん突起状になった後、そこから小さな羽根のようなものが生えてきた。

空中を飛べるようになったリッキーだったが、スーパーで飛んでいるところを見られてしまい、大騒ぎになる。カティはリッキーを家の中で育てようと、リザと力を合わせるが、狭いアパートの中でリッキーは生傷が絶えなかった。

そんなある日、パコが戻ってくる。一緒の家族になろうとパコは提案するが、同時に、リッキーを報道陣に見せて、養育費の足しにしようとも言う。カティは渋々従う。報道陣の前で、カティはリッキーをつないだ紐を手放してしまう。

リッキーが去り、カティは哀しみにくれる。パコとリザは少しずつ距離を縮め、家族になろうとしていた。自殺を決意したカティのもとに、すこし大きくなって翼の羽根も生えそろったリッキーが現れ、そしてまた、去っていく。カティも新しい家族を生きる決意をした。リザを二人で抱き寄せる手が、リザの背中に翼の形を作る。

感想

赤ちゃんの背中に天使みたいな羽根が生えてくるのか……ワァ……ガッチャン……と思ったら、おもっきし肉質の、手羽先みたいなのが突きだしてきて、「うっ」となる。翼に羽根が生えるところも、カイワレ大根微速度撮影みたいな絵で、微グロ注意、というタグを貼るに遜色ない。

それでもその羽根でパタパタやって、あちこちぶつかりながら飛ぶ様はかわいらしい(いや、肉手羽先もニヤニヤ笑いながら観てはいますが……)。映画に赤ちゃんを出すのは反則。人少ない観客席で「ほにゃー」と声にならない声を押し殺しながら観ていた。赤ちゃんだけでなく、リザも可愛らしい(一般的なニュアンスでも、ロリコン的なニュアンスでも)。

この映画で何が起きたのかと考えると、「なんらかの障碍をもった子供を産んだ母親が、子供を守ろうと一生懸命になっていたら、手違いで死なせてしまった」という話を寓話化した、というのが一番素直だろう。

寓話か……あるいは、まだ幼いリザの目には、現実がこんな風に見えたのかもね、という、「リザの主観」という観方もできるだろう。

リザが学芸会の役だかなんだかの羽根をつけるシーンと、部屋の壁紙が空の模様、食べた手羽先と同じような羽根が生える……というあたりを根拠に、空飛ぶ赤ちゃんのシーンは、リザの現実変換によるものだ、と観ることは可能かも。あと時間の圧縮っぷりも、語りの上の便宜と考えるには、ちょっと常軌を逸してる。

あれ、そういえば、リザがいない場所で空飛ぶリッキーちゃんが出てるシーンって、ひょっとして、ラストだけじゃないかな。リッキーが空を飛ぶシーンでは、必ずリザがそこにいるというトリックだったりして(確かめてないけど……)。ラストにしたって、リッキーは母親の前に現れた天使みたいなものとして描かれてるし、現実には空なんて飛んでないよ、という解釈もできるかも。

そう考えるとずいぶん重たいし、技巧的だ(未確認だけど……)。重たいけど、こういう描き方で描けるんならそれでもいいか、などと思った。

63点。