英国王のスピーチ

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感想

これを書いている今日(日本時間28日)の昼過ぎに、アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞が決まったみたいだ。

しかし、私みたいな英語できない日本人は、魅力3割くらい減して観ることになってるんじゃないだろうか。それくらい、最後のスピーチは重みのあるシーン。

バーティの吃音という症状は「仕事が出来ない嘆き」ではない。彼が生きることそのものにつきまとう「もどかしさ」なのだ。吃音で人前に立って職務をこなす、ということは、おそらく、彼の一番弱い部分を晒したまま、人前に立つということだ。

だから、映画は一見、テクニカルな興味とトレーニングで(カンフー映画みたいな修行シーンとして)見せているようで、それをかなり前半で消化してしまう。そこから、バーティの置かれている境遇を積み重ねて描くことで、「生まれつき王族の人間が吃音であるとはどういうことか」を、丁寧に説明する。

この話は、バーティが「幼時のトラウマ」を発見し、それに向き合い、罵り言葉とともに破壊することで、吃音を克服する……ような話ではない。トラウマとかあるかっつの。あってもそんな簡単に矯正できるかっつの。

バーティの吃音はあくまで、ライオネルの丁寧なガイドに付き添われるようにしか、改善しない。

最後のスピーチがそこから一歩乗り越えたように見えるのは、バーティの言葉が「語る内容」を獲得した、ということなのだろう。

「もどかしさ」「ままならなさ」がある人なら、なんか意味わからんまま(ドラマのヤマに関係なく)泣けると思う。私はそうなった。

82点。