悪魔を見た

3月の1本目。

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感想

悪魔のいけにえ」「ホステル」的なものを見た…でいいんじゃないのだろうか。切断、損壊、*切り、*肉食、ウンコ…俺内CERO的にも当然Z指定。

バラバラ殺人の死体を「ホステル」以上に肉塊感を出して映したり、鑑識がつまづいて「あっ」と段ボールに入れた婚約者の頭がイ・ビョンホンの目の前に転がったり。ずっとそんな感じのエクストリーム表現が続く。

段ボールに女の頭……とは、「セブン」を思わせるオープニングだが、だいたい終わりまでそういう話だと思ってよい。この映画では、ブラピの代わりに、婚約者の頭が転がる光景を見て狂ってしまったイ・ビョンホンが、140分かけて復讐を果たす=憤怒の大罪を犯す。

イ・ビョンホンは悲しんだり苦しんだりする演技をすることもあるが、基本的には感情を殺した芝居。俳優が噴き上がらない暴力シーンを観ていると、自分が暴力を行使している感覚が強くなる。これがけっこうキツい。話がつまらなくはないのだが、また暴力、また暴力…はよ終わらんかなぁ…と思いながら観ていた。

それとは裏腹に、「次のいじめはどんなかなぁ〜」と、暴力シーンを期待して観ている自分もいる。過剰に暴力を盛り込んで、観客に自分の暴力性を気づかせる意図もあるのだろうけど、見せ方に捻りがあるわけでもなく、スクリーンの中では、特殊な訓練を積んだイ・ビョンホンが、無表情に虐待を加え続ける。

チェ・ミンシクの犠牲になる人はたくさんいるが、主人公のイ・ビョンホンだけが、びっくりするほど強くて怪我もしない。不気味だけど、それが、この映画が客を連れて行きたい場所なんだろう。でなきゃ「自分が**のア****を切った相手が****で向かってくるところに****を撒いて攻撃」とか、笑っちゃうほど鬼畜な戦いになるわけない。

最後の落とし前の付け方。チェ・ミンシクにあれだけ「俺をこれだけ痛めつけて殺すなんておまえは憤怒の大罪を犯すことになるんだぜ」と煽られ、それであの斜め上の解決。客観的に見て、殺す以外の付加価値の部分に、何の意味もない。あれは本当にひどい。そしてそれを「だよねーそういう仕掛けだよねー」と思って観てしまうおれもひどい。

ふつうの韓国映画と思って映画の日に見にこられたような年配ふうの女性が数人いらっしゃったが、たいへん気の毒。R18の他にも、△に血しぶきのマークとかつけないと…。

序盤の、チェ・ミンシクの「なんかちょっとそのへんにいそうな頭のおかしいおっさんがもっとおかしくなった感じ」は巧い。その「おかしいおっさん」が、話が進むにつれて、どんどん映画的に大物になっていくのは仕方ないんだけど、場面場面で顔づくりが巧すぎて統一感がない気もするなぁ……。送迎バスを運転してるときの慇懃顔の男と、ラストの壮絶な顔の男が、同じ人間に見えづらいという。

タクシーの中をぐるぐる回りながら撮るとか、どうやって撮影してるのかわからないシーンはいくつかあったと思う。豪邸のドライバー抜きのシーンもよい。


監督は「グッド・バッド・ウィアード」の人だそうなので、そっちもDVDで観ます。

67点。…いやー…63点くらいかな…。

までもこんなゲスい映画を、イ・ビョンホンチェ・ミンシクを立てることで最後まで観られる映画にしたってのは手腕なのかも知れません。うんざりするけど、忘れられない映画。

ノート

しかし傑作という人もかなりいる…やはり私の目は節穴だ…。

  • http://cinemanote.jp/2011-01.html#2011-01-24_1
    • 「あのラストで、主人公は何をしたのか?」
    • 特に息子や父親のことなんてどうでもよかった親子供を、現場に立ち会わせることで、主人公はそこに何かを作った、ってことだな
    • そこから逆に、冒頭の「義父が泣き崩れるシーン」「義父の手を握るシーン」を解釈することもできるか
    • 「友達が死んでそれで結束を強めてるおまえたちって何なんだよ」みたいな問いだと考えれば普遍性あるな。韓国で家族が持っている重さや意味はちょっとはかりかねるものがあるけど。
  • wikipedia:光州事件
    • 本筋に回収されなかったのですっかり忘れていた……。
    • 「えーと、あ、すいませーん」と、何事もなかったのように話の続きが進むという