愛する人

うーむこれは…男が観ても「ちょっと…えぇと…すいません」という部分があるのは確か。原題は「Mother and Child」。まぁそういう話。

ナオミ・ワッツサミュエル・L・ジャクソンが上司と部下の関係で出てきて「おっ」と思ったら、やはりナオミ・ワッツは期待を裏切らなかった。

そのナオミ・ワッツを若いとき出産したまま、養育できずに養子に出さざるを得なかった母親が、アネット・ベニング。独身で母親を介護しながら働いている。37年前に養子に出した顔も知らない娘のことを思い、その原因となった母親には複雑な感情を抱いている。

ナオミ・ワッツアネット・ベニングの母子は、全く面識がないが、共通しているのは、どちらも心の一部が凍っているところ。アネット・ベニングは過剰に防衛的。ナオミ・ワッツは卵管結索処置をして(自分が子供を残すという可能性を封じて)男とやりまくりだったり。

これに、子供が作れない黒人女性のエピソードが並行して……と、話はとても素直。ただ、関係性の中でそれぞれの人物が抱いている感情が複雑なので、観ていて退屈しない。しかしそのぶん、男性的な発想は後ろに引っ込んでいるので、観ていて「えっ、結局この人にとって仕事って…」とか余計なことを考えてしまう。

並行する3本のエピソードのうち、ナオミ・ワッツはいったい何をしたのかが、ちょっとした仕掛けになっている。親を捜そうともせずやりまくって**してしまうなんて、客観的には……。しかし最後のシーン、アネット・ベニングが徒歩で**の元を訪ねることができるのは、ナオミ・ワッツが37年間、地元にこだわって生活しつづけたおかげ。彼女は人生全体で「自分の生まれた場所に住む」ということをなしとげたのだ。

私は「バラバラに進行していた3つのストーリーが一本に収束して…」みたいな仕掛けにはそれほどよさを感じない(映画なんだからそれくらいできて普通)し、本作も期待せずに観ていたのだけれど、話を一つにまとめる構成上の力が、登場人物の意志の力と重なっている、というのは、とても意味があるし、感動的だと思った。

全く脈絡なく出てきたデヴィッド・モースもよかった。デヴィッド・モースってかわいいよね!

73点+最後の解釈で5点足して、78点。