冷たい熱帯魚

今月4本目。「悪魔を見た」「アンチ・クライスト」と来て、R18三本立てもこれで終わり。全部観てもなんの自慢にもなりませんが……

さんざん事前情報に脅されて観たせいか、「そうでもないじゃない!」というのが第一印象。もっとネチネチと脅迫的な状況を作って追い詰めるのかと思ったら、ストレートに話が進む。(愛犬家連続殺人事件と北九州監禁殺人事件の話が頭で混ざって、すごく陰惨な話を予想していた)

終盤、家族がふたたび一つ屋根の下で飯を食うようになったあたりからはいくぶん象徴的な展開になった。同時に、そのあたりでエクストリーム表現が規定水位を超えて溢れてしまったので(意図的だろう)、終盤は映像を見てもなんの痛みも感じない。そこに最後の台詞、ラストショット。人間ちいせぇ! でも生きてる! と、静かな感動すら覚えた。

村田(でんでん)のつかみ力は圧巻。最初の殺人シーンなど、長回しでもないのに緊張感が持続して、知らないうちに人が死んだことになってるのは、でんでんが場を支配してるから。頭おかしいのに、時々ド正論っぽい名言を言うから始末がわるい。「カイジ名言集」とかより「村田名言集」を出版したほうが役に立つレベルの名言力。

こういう押しの強い親戚のおっさん、一人くらいいるでしょ! と思って観るとイヤーな気分になれる。自分の知っている親戚のおっさんは、勢いはあってもビール数杯でふにゃふにゃになってしまう程度にはチョロいけど、これくらい肝が据わっている人が身内にいたらどうしよう……まぁその時は私も別の種類の人間になっているのか。

「ここを長回しで撮るのか」と意識したのは、死体を処理した後のくだり。予告でおなじみ「そぉーいうーことだっ。よろしくな!」が飛び出すまでをじっくり追っていて、すごくスリルがある。ここはたぶん、ビビってしまった吹越をどう口説くか、という興味で、でんでん側に感情移入してるんだろうな。

笑える(私は「わー」って言ってる以外はずっと口開けて笑ってた)ポイントもたくさんある。たくさんありすぎて書ききれないけど、台詞じゃない箇所だと

  • 筒井(渡辺哲)の服とか呼び方が微妙に変わるところ。お前最初弁護士って言ってたじゃねぇか! なんで最初のシャツ着てねぇんだよ! この感じ、どこかで見たことがあると思ったら、「地方のあやしい中小企業」特有のイヤ感だな……。
  • 社本(吹越満)の奥さん(神楽坂恵)が、洗脳されて家に帰ってきたとたん「ビジネス」って言葉を連発するところ。そのへんのファミレスでマルチの説明してる人(マルチや保険の説明やってる人は喫煙スペースと同様隔離してほしい)特有の感じ。

全体的には、「デス! ライフ! やっぱりデス! どうでもいいデス!」そんな感じ。

83点。おっぱい点がかなり含まれるが、それを分けて考えると、この映画の業の部分も分解してしまうことになるので無理。女性にどう見えるかはよくわからない。