わたしを離さないで
story
感想
- 抑えた色調で映像が美しい。
- キャリー・マリガンの年齢不詳美人顔の魅力は何かと考えていたけど、やはりあの頬と法令線の出る顔の左半分ではないかと思い、キャリー・フィッシャーやマギー・ギレンホールと同じ箱に入れた。「ヴィーナスの誕生」の顔は半分ずつ違う表情で…。
- 映像は綺麗だけど、なんとも単線的、説明的。
- 前観たのがキアロスタミの映画だったから比べるのも何だけど…映像の中で、映像とは別の何かが起きてるような映画が好きなのだ、私は。
- 第一部、特別な寄宿舎での暮らしがほのぼのと描かれる。それがずっと説明調。ここは寄宿舎です、そしてみんな先生のおはなしを聞いています、そして…そして…。退屈ではないけど、「小さな恋のメロディ」を薄味にして観てる感じ。唯一、潜入して(?)子供たちに秘密を告げた先生は「そして先生は左遷されました」で終わるし。そ、そのためだけに出てきたの? 先生は組織に消されたりしてないの?
- それを子供に伝えることが、どれくらい社会的にヤバいことなのかが、わからんので、なんとも…。
- そもそも、この施設は、社会の合意のマジョリティの上に成り立っているのか、あるいはごく一部の先鋭的な発想の人々のプロジェクトなのか…。どうも、金持ちが自分のバックアップを作ったということではないみたいだけど、なら、一般的な臓器「家畜」を支えるための社会的コストは……人間の寿命が100歳になったら、そっちのコストも…ほげほげ……(うるさい)
- 原作読んでないから、リアリティの水準がわからんのだけど、どうにも、あちこちがザルで、社会設定も人間像も、つかみどころがない。
- エドワルドことアンドリュー・ガーフィールド(田島貴男顔)のハメられ激昂芝居がまた観られた。今回はパソコンは破壊していません。
- あの叫びのシーンで「ノルウェイの森」を思い出したのだけど、この映画では一緒に叫びたくなる気分には…ならんのだよな。なぜだろう?
- そりゃ確かに、「自分が身体のパーツを奪われて殺されるためだけに生きている」というふうに置き換えたら、叫びたくなるだろうけど、その意味は、映画の中で十分に語られていないのだ。まして彼らは、特殊な施設で洗脳教育を受けたピュアな人間なのだし、彼らが生死をどのように感じるか、「クローン家畜だってこんなふうに感じるんだよ」と、観客の実感に繋がるものをほとんど提示していないので、わからない。
- 観客が美しいと思えるものを、観客と一緒になって「美しいな」って眺めるとか、そういうシーンを一つ入れるだけでも、共感度が違うんじゃないだろうか…。
- 「ノルウェイの森」では、「どいつもこいつも勝手なこと言いやがっていい加減にしろ馬鹿」というワタナベ君の感情のリアリティは、観客が共有できるわけで。
- ポルノ雑誌を見ていた理由というのは、確かにハッとしたけど……うーむ。
- 校長がシャーロット・ランプリング!
映像や抑えた芝居は嫌いじゃない。でも、感情を揺さぶるために必要なボリュームに欠けているんじゃないだろうか。それは細部を工夫したり物語にテンションを張ることでもっとなんとかできそうな…
67点。