マーラー 君に捧げるアダージョ

story

1910年の夏、グスタフ・マーラーの妻アルマは、サナトリウムで若い建築家と恋に落ちた。
嫉妬で煩悶するマーラーは、ジグムント・フロイトのもとを尋ねる。マーラーフロイトが根掘り葉掘り個人的なことを聞きだそうとするのに反発するが、フロイトは根気強く、彼の結婚について尋ねる。何の不満もない結婚のように語るマーラーだったが、自由な精神の持ち主だったアルマを強く縛っていたことが、対話の中で、次第に明らかになる。マーラーは婚約時アルマに作曲を禁じていたし、二人の間の子供も病気で亡くなっていた。

フロイトの言葉を信じるようになったマーラーと、フロイトとの間には友情が芽生えた。マーラーはアルマに今の自分の思いを告げ、建築家から妻を取り戻す。

note

  • 私が無教養だとか文芸映画に興味がない、ということを置いても、ちょっとこの撮り方はひどいんじゃないの。手持ちカメラで、意味なく斜めから撮り、意味なく動かす。そして頻繁にカットが切り替わる。なんか気分が悪くなって話に集中するどころではなかった。
  • いちど入り込めないと、どんどん悪い点だけが目立って、いろんなものがあざとく見えてしまった。席を立とうか、とさえ思った。
    • 劇中7割くらい、人物が興奮していて、誰にも感情移入できない。
    • そして台詞が全部説明。なんでマーラーがアルマを愛するようになったのか、なぜ心が離れたのか、なぜマーラーフロイトを信じるようになったのか、ほとんど映画的な描写がないまま「あなたはわたしの心を縛ったのよ!」とか口で言う。
    • 公演準備のシーンで劇場の通路を歩いていると、突然「キャーッ!」という声が画面外から入り、何だ、と注意を向けると、出演者がカツラのことで文句を言っていて、「出演者というのはかようにわがままなのです」と説明が入る。本編とは一切関係なし。しょうもないアクション映画でももうちょっとなんか工夫する。客に寝て欲しくないなら「寝るな」と画面に出したらどうか。
    • 長女が死んで次女は生きているのだから、それなりに何かがありそうなものだけど、(私が鼻をほじって見ていた限りでは)描写なし。長女が死んだシーンから後の時間を現すシーンでは、いるはずの次女の姿を映さない。どこかに預けた? ただ長女の死を夫婦関係を悪くするきっかけとして使ってるだけ?
    • で、フロイトは単なる聞き役。こういうのは、フロイトの人生とマーラーの人生が交差するところが面白いんじゃないかと思うけど、フロイトに関する描写は皆無。
  • フジテレビが役所広司松たか子を主演に2時間ドラマを作ったらこうなるのではないか、という感じがした。
  • 撮り方がひどい、ということに重ねて、これを見て「同時代にはフロイト先生もいたんですね〜」「クリムトとも接触していたんだ〜」などと、ちょっと知った気になる観客がいることを想像すると、映画のクオリティ以上によろしくないのではないか、と思う。ためになる以前に、これ、つまんないと思いますよ。そしてつまんないものには「でも知識が増えたし」みたいな言い訳せずに「つまんねーよ」と言っていいと思います。
  • 未完成の交響曲10番から音楽が使われていたりしているらしく、音楽的には良い……らしいけど、うーん。私には、ただ鳴らしているだけで映画の邪魔に聞こえることが多かったです。無教養でもうしわけございません。

39点。