10月に観た映画のまとめ

1. 人生、ここにあり!
2. 未来を生きる君たちへ
3. 水曜日のエミリア
4. 光のほうへ
5. ワン・ヴォイス
6. 海洋天堂

ヒューマンドラマしか観てない……。「ロサンゼルス決戦」やあれやこれやはどこに行ったのか。シネコンに行かずに町中でばかり観るからなんですが。

どれもよかった。「人生、ここにあり!」はウェルメイドすぎるけど、それ以外は、ストーリーとは別のところで訴えかけてくるものを感じた。どうせ**な感じだろ? (**には順番に「精神病院もの」「暴力イクナイもの」「幼子死んじゃったもの」「社会の底辺もの」「合唱感動もの」「死期と親子もの」を代入)……といえば、まぁたしかにそういう話ではあるのだけど、それ以外にもちゃんと観るところがあった。得をした気になった10月でした。

人生の経験をほとんど避けるようにして生きてきたが、映画で女の子が指揮をしているのを見るだけで涙腺が緩む(ワン・ヴォイス)くらいには、歳をとった。しかし映画館に年配の客がそれほど多くないのはなぜか? いつか映画を追うことすら面倒になるのかも知れない。

今年の累計、61本。

まとめを書いてないので、あとでざっとふりかえる。

人生、ここにあり!

「実話に基づいたフィクション」なので、観るのに身構えてしまう。しかしそのあたりのガードをやんわりと解除しながら、最後の泣かせまで持っていく手際のよさに感心。説明、キャラ配置、まっすぐなストーリーの運び、どれも文句のつけようがない。へたな映画なら、最後のあの人は絶対「**」ような脚本になって、シラっとするけど、そうはしないんだな。

はたして的確なタイミングで的確な秘孔を突かれてガン泣きであった。

82点……。いやそれは高すぎか……今みたら「ブルー・バレンタイン」と同じ点だ。去年くらいの感受性(カールじいさんに80点をつける価値観)で観てたからそういう点数になったのかも。感性っていってもサボるとすぐリセットされるもんだ。

魔法を自分で解除しとくと、精神疾患患者というのは、ストーリー上のキャラ付けは簡単だし、そのキャラに対して「なわけねえだろ」とは、ツッコミにくいわけだ。極端な話、困ったら患者の一人がパニックを起こして騒げば、それで場は緊迫するし話は転がる、と言える(そういうことをやってもあまりアラが目立たないので、私がうまいこと乗せられているかも、ということ)。普通の話だと緊迫させるための必然性をもってこないといけないものが、「いや、この人はそういう人だから」で片付けられてしまう。そこらへんは下駄をはいている、というか。精神疾患ものというのは、劇映画としては一種のジャンル映画なのかも知れない。

未来を生きる君たちへ

これは、別途書いた。

この映画の「未来」というのは、もはやどんな理屈も一枚岩ではなくなってしまった「現在」だと思うんだよねー。もののわからない子供が理屈のせめぎあいの中に置かれているのは、恐ろしいことだ。

水曜日のエミリア

極端に悪い人もいい人も出て来ない都会のドラマ。

若干性格に意固地なところのあるナタリー・ポートマンが主人公。いわゆる略奪愛で弁護士一家に入ってしまって、妻と母の役割を担うことになるが、なかなかうまくいくもんじゃないね、という。よくある人間ドラマだけど、悪くなかった。外の世界を描こうとしているところに共感がもてたのかも知れない。

光のほうへ

ムショあがりで貧乏長屋で細々暮らす兄と、ヤク中で子供もいる弟の、ままならないストーリー。兄のパートの時間軸の前半を弟のパートからなぞるという構成で、「あのときの電話の向こう側では……」みたいなことが後で明らかになる。ヤク中で徐々に売人に手を染めていく弟のほうが悲惨なので、兄のパートの時間軸を弟がなぞるのを追うのは、それなりにつらい。

兄が突然怒りにまかせて電話機をボコる、というシーンが唐突で、さらにその事実が後々まで話に影響するのだが、兄の性格上そういうふうにしないと入れられなかったのか……。

ヤクの仲買人をやってる謎の「先生」がいい。こんな感じで、ちょっとうさんくさいがなんとなく信用できる人間に依存しながら、人は追い詰められていくのだろう。

ワン・ヴォイス

(tbd.)

海洋天堂

自閉症の大きな子供を抱える父が末期の肝臓がんで……という話。父親がジェット・リー。ちなみに脚本を読んだジェット・リーはこの映画にノーギャラで出演したとのこと……。

私が父親ではないからかも知れないが、親の立場としてより、子の立場として観ていた気がする。

女優がいい。終盤明らかになるジェット・リーの奥さんの美しさは「そりゃこの思い出は一生をそれに捧げたくなるな」という説得力。

観ていて「あーもう何が自閉症だ! ふざけんな!」とイライラするところまで感じられた息子の芝居もよかったと思う。