10.ワードバスケット
http://ejf.cside.ne.jp/review/wordbasket.html
最後に、2003年、最もプレイ回数の多かったゲーム。きっと2004年も、最もプレイ回数の多かったゲームということになるだろう。
場に出たカードに、手札で「終わる」言葉を言いながら出していく、ひねったしりとりゲーム。1プレイが数分で終わり、アクション要素や笑いの要素もある。ちょっと時間が空いたときの遊びに最適。
しかし、基本的には、「ゲーム」というよりも、個人の能力差が露骨に出る「歌留多」に近いものなので、選ぶかどうかは少し迷った。実際、能力差が出るのでこのゲームが嫌いな人も、けっこういると思う。
それでも選に入れた理由は、ゲームシステムというより、(わたしの知っている)ゲーマーのみなさんが、このゲームをプレイするときの、真摯な態度に心打たれたから。いや本当に。
たかだか、「しりとり」なのだから、その場その場で、おもしろおかしく、言葉が出てくれば、それでよしと、ふつう思うのだが、ゲーマーという人種は、こういうゲームでも、結構真面目に「勝つ戦略」を考えるのだ。
「ぬ」から始まる言葉が出にくいので、「塗」「盗」などの複合語を考えたり、「に」で終わる言葉が出にくいので、「〜蟹」などの複合語を考えたりする。そしてそれをパターン化する。
パターン化してしまっては面白くもなんともないではないかという人もいる。
しかし、一つのゲームで勝つために、日本語全体の中で、「蟹」「塗」などの単語を重視するという「戦略」があり、それによって勝率が上がる、というのは、事実なのだ。この事実を、ゲーマーは冷静に処理する。
ゲームという枠の中で、「蟹」「塗」という何でもない言葉が別の価値を帯び始める。そしてわたしはこれが、ゲームの持つ魔法だと思うのだ。
「たらば蟹、ずわい蟹、たかあし蟹…蟹はけっこう使えますね」「塗りかべ、濡れ雑巾…あー…駄目か…、塗りぐすり、ヌートリア…ヌートリアは通しでいいですか?」こんなくだらないことをゲームというルールのために検討することは、素敵なことだと気付いた。
2004年もよろしくお願いします。