ゲーム的状況の提示

id:gamebookさんの言われているハウダニッツというのは、条件が与えられた、さぁどう考える、という、もっと一般的な本格ミステリ全般の話として考えていいと思う。

ではなぜ、「カイジ」「ジョジョ」が本格ミステリを想起させるか。まずその状況提示の手法かも知れない、と考えてみる。

ストーリーを読んでいると、<パズル・ゲーム的な状況の提示>というシーケンスが、これ以上ないようなあからさまさで、書かれていることに気が付く。それは時に過剰な台詞や描写で笑いを誘うのである。

漫画のどのシーンがそれか、というのは、改めて言うまでもないだろう。ヤブヘビだと困るので書かないでおく。

ミステリにおいて、<パズル・ゲーム的な状況>が提示されるときが笑えるという例を、乏しい知識からひとつ挙げてみよう。


「ひとつ僕に、次のような啓発的な質問をさせていただきたいとね。葬儀のとき、家から出ていって、それきり帰ってこず、遺言状が紛失しているのが発見されてから、いちども捜査されなかったただひとつのものはなにか、ということを」
サンプスンがいった。「たわごとを並べるものじゃない。あらゆるものが捜査されたんだ。しかも、きみも聞いていたとおり、それこそ徹底的に。それは、きみも知っているはずだ」

「おお、まったくいやになっちまうなあ」とエラリーはうらめしそうにいった。「こんな明き盲ってみたこともない…」エラリーは静かにいった。「ほかでもない、僕の尊敬すべき先祖さん、ほかでもない、ハルキスの遺骸を納めた棺そのものですよ」

これですよ。この歌舞伎にも似た様式美。まさに、エラリーがこの台詞を言い放つ瞬間*1、頁の行間には、「ババァーーーン」と、ジョジョ的な擬音が鳴っていて、ぼくは読みながら、ヘラヘラと笑いだしてしまうのだった(ホントです)。

*1:念のため書いておくと、このシーンは66ページ前後に書いてあることで、事件の本質的なネタを割っているわけではありません