北森鴻,『共犯マジック』,徳間書店,ISBN:4198921393

(http://book.g.hatena.ne.jp/mutronix/20041020#p3 より)

うーむ。昭和の現代史(北野武主演で映画やドラマになるような感じの)に興味がある人なら楽しく読めるのかな。虚実の合間を縫うように編まれた連作短編。

精密につくられたパズルのピースが埋まっていく心地の良さはある。ちょっと脚本の捻ってあるいまふうの映画っぽいとも言う。ただすべての原因を、魔力を秘めた「本」のせいにするというのは、フィクションとはいえちょっと弱いんじゃないのかと思った。

史実をとりいれつつ、フィクションの網を張り巡らせる手腕はさすがなのだけど、むろん読者もそのへんは了解して読むので驚きはやわらかめ(そういう意味では「驚愕の」という惹起の文句には偽りありだ)。

「ここで出てきたXとは、ここまでの伏線での誰か?」という、活字ならではの楽しみかたができる良作だと思った。