誰がボードゲームを買うのか(あるいは、誰が買うと思われていないのか)

日頃読ませていただいている「卓上遊戯創造館別館」のid:stelmosさんから、コメントへのお返事をいただきました。

経緯

常々私はstelmosさんの書かれること(正確には、それを支えている前提)に対して、「何か違うなぁ…」と不平とも批判ともつかないことを漏らしていたのですが、そういう呟きを、目に留めていただいたようでしたので、思い切ってコメントで、質問のかたちで、違和感をぶつけてみました。

質問の内容:

stelmosさんは上のエントリを含めて、「マーケティング」「長期戦略」「販売価格」といった言葉で、販売店やメーカの取り組みに視点を向けられていると理解しております。差し障りがなければ教えていただきたいのですが、stelmosさんは、主にどのような人が、その「戦略」に乗ってボードゲームを買う、とお考えなのでしょうか。私にはそれがよくわかりません。

これに説明をいただきました。

まとめていただきありがとうございます。

感想

長期的な視野に立って、売り場で実演を交えるなどして、ボードゲームを販売して欲しい、というご意見には、異論はありません。面白いかどうか、箱の中身もよくわからないものは、いくら安くても買う気にはなりませんから。実際には、売り場面積の都合で難しい面もあるかも知れませんが、そういうものに触れられる場所を常設して欲しいと思います。

記事内容の理解

元記事の文章では、最初が「メーカーはマーケティング発想の転換をして、長期的に売る努力をしてほしい」といった話になっていますが、それだと話の脈絡がつかみづらいですから、お話の内容を想像で補いつつ並べなおしてみます。

  • ゆうもあ」などの、草の根活動の成果で、日本でも家族でボードゲームを楽しむ習慣が根付きつつある
  • プレイした人の中に「このゲーム、子供にいい! 買ってみたい!」と思う人が出てくる
  • でも、現状、玩具売り場にはまず置いてない。子供向けの木のおもちゃだと値段も高い
  • だから、メーカー・販売店はもっと頑張ってほしい

こういう感じになりますでしょうか。

直接的には書かれていませんが、おもちゃ売り場でボードゲームを買うのは誰か、という私の質問に対しては、「親子や家族でボードゲームを遊んでみようと思った人」といった層が中心になっていると読みました。

私の考える問題

以下、反論ということにはならないでしょうが、問題提起。

私は、おもちゃ売り場でボードゲームを買う人が増えればそれでいいのか、ということを、問いたいのです。

メーカー・販売店が頑張るのは、基本的には、量販店のおもちゃ売り場の中だけの話です。売り場のボードゲームが安い値段になって、実演販売が行われるようになったとしても、それは「よし、おもちゃを買おう」と思って売り場に来た人にしか効果がありません。

「量販店のおもちゃ売り場で売れるようになってほしい」ということを、目標に設定した時点で、暗に、他の様々な可能性がわきにどけられてしまう、ということを、指摘させていただきたいと思います。

たとえば:

  • 「漫画喫茶でぶらぶらしてる、時間はあるけど暇な人」
  • 「もとからテレビゲームなど複雑な遊びが好きな人」
  • 「仕事をリタイヤして、頭を使う趣味を持ちたいと考えている人」
  • 「ドイツ語やドイツの文化を遊びの形で学ぶのもいいかなと思っている人」

といった人が、量販店のおもちゃ売り場に、買い物に来る、という可能性は、かなり低いと考えていいでしょう。

そういう人への「普及」のシナリオは、ないのだろうか、というのが私の疑問です。

まとめ

「量販店のおもちゃ売り場で、一般家庭向けにゲームが売れること」が最終的な達成モデルになるのでしょう。しかしながら、そこにだけ活動を最適化してしまうと、他にもプレイしてくれる人がいる、という可能性そのものを、想像しづらくなるかも知れません。